掛け軸の取扱い
掛軸は紙の特質として、ぬらせば伸び乾けば縮むという本来の、そうした性質のものを、平らに掛けることに無理が生じます。そして、水分や火気に敏感です。
雨の日は湿気を含み、天気になれば乾燥し狂う原因になります。汗をかいた手で扱うと触れたところが乾いて、その部分だけ引きつります。暖房のしてある部屋は、乾燥が過ぎると掛かり具合が悪くなります。
作品を大切にされる方は、梅雨期には名品など大事なものは掛けない心づかいが大切です。また、自然とは大変有難いもので、年月が経つと糊、紙、裂の個性をすこしずつとってくれますから、最初多少掛かりの悪いものでも古くなると具合がよくなります。
細かい心づかいで仕上げた表具も取扱い上のわずかな不注意によって損傷し、制作上の苦心が水泡に帰する結果となります。
よくよく注意をはらって取り扱っていただくことが大切かと思います。
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